急速に進む高齢化。
それに伴い、今後「介護」の問題が、日本国および日本の企業を直撃するであろうと考えられています。
保育所不足が深刻化しているように、介護事業者不足も今後ますます深刻化することが予想されます。
そうすると、仕事を持っている現役世代が、直接老親の介護をしなければならなくなります。
特に、介護を必要とする年齢の親の面倒をみる世代は、ちょうど50代〜60代の管理職世代になります。
この世代は圧倒的に男性労働者の数が大半を占めていますので、すなわち、近く介護の問題に直面するのは、「男性管理職クラスの方々」ということになります。
20代〜30代の育児期の労働者が育児休業を取得したいと申し出たときに渋い顔をした、まさにその世代の方々が、今度は自分たちの個人的事情と向き合うことになります。
今、もうすでに、介護を理由に離職せざるを得なくなった人は急増しているそうです。
育児休業に比べ介護休業の取得はほとんど進んでいません。
平成17年度発表の厚労省調査結果によると、常用労働者に占める平成16年度に介護休業を取得した者の割合は0.04%という状況です。
育児も介護もお互い様、という意識を持ち、「明日は我が身」という心構えで、部下や上司の休業への理解を深めていきたいものです。
育児は子どもの成長に応じて、手がかからなくなり次第に「楽になっていく」ものですが、介護はその逆のケースが大半です。
育児が子どもの成長という「プラスの経過」を見守る行為であるのに対し、介護は、最後は必ず「マイナスの経過」を見守ることになり、精神的にもとても辛く悲しいものになります。
そして、終わりが見えにくい。
休んでも、復帰の目途が立ちにくく、復帰しても頻繁に休まなければならなくなるかもしれません。
少子化で兄弟の数も減っていますので、ひとりっ子ならば、一人で二人の両親の面倒をみなければならないということも考えられます。
介護というのは本当に大変です。
さて、このような介護という事情を抱えた労働者が、介護休業を取得することすらなく、すぐに辞めてしまう、辞めざるを得ないという状況は、今後人口減少に伴い労働力不足が深刻化することが予測されている中では、企業にとっても決して好ましいことではありません。
介護や育児、病気など、個人的事情を抱えた労働者を、その度に排除していては、「人手不足」に陥ることは明白です。
これからの企業は、仕事と介護、仕事と育児などを両立することができるような体制を整えることが必要不可欠になります。
暮らしの中の諸事情に合わせ、柔軟に、就労時間や就労日数を調整でき、短い時間でも能力や成果を最大限に発揮できるような、労務管理上の工夫が求められます。
常に、従業員内の育児や介護の事情を把握し、どのような制度が求められているのかニーズ調査を行い、介護ラッシュないし介護休業ラッシュに備えておくことが望まれます。
そして、前述のとおり、介護や育児に対する理解と、お互い様意識が大切です。それは、育児や介護という事情に直面していない従業員も含めての相互理解です。
つまり、子育て支援や介護支援だけでなく、その他の総合的なワークライフバランス支援も進めていく必要があります。 |
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